2015年1月25日日曜日

視点:消費税16%と歳出削減45兆円のリアリティ=フェルドマン氏(2)

しかし、フェルドマンは「増税=財政再建」は間違った発想だとする。確かに(1)であげた要素は日本経済の短期的な景気浮遊には追い風となるかもしれない。しかし、問題は中長期的にみて、日本経済が持続的成長経路に乗ることができるかどうかだ。特に、社会保障の持続性をどう確保するかが極めて重要な論点となる。財務省のホームページによれば、2013年の社会保障給付費は110.6兆円だった。恐ろしく巨大な額だ。この社会保障をどうやって将来にわたって持続していくのかが日本の大きな課題となる。



2060年度時点における債務残高対GDP比を現在の200%超から100%まで引き下げて安定化させるには、2020年代前半にGDPの11.94%ポイント相当分の収支改善が必要となるが、これを消費税の増税だけで補おうとすると、1%の消費税率引き上げによる税収増効果をやや多めの2.5兆円と楽観的に見積もったとしても、消費税を34%へと引き上げることが必要となる。日本で34%の消費税なんて設定すれば、景気が大幅に悪化することは火を見るより明らかなので、そんなことはほとんど不可能と言っていいだろう。

ではどうするのか。だとすれば、歳入・歳出の改革を図り、経済成長を促進するしかない。2020年代前半にGDPの11.94%ポイント相当分の収支改善をするには60兆円が必要となるが、これをフェルドマンは25%の増税と75%の政府歳出削減で補うことを提案している。

経済成長促進については、2004年から13年までの10年程度の中期的なデータで見て、OECD加盟の先進成熟国(ルクセンブルクなど経済規模の小さい国は除く)では、研究開発費の対GDP比が1%ポイント上昇すると、労働生産性の伸びが約0.4%ポイント上昇しているという相関関係に注目し、マイナス約0.5%の生産年齢人口を補うことも計算に入れて、研究開発費の対GDP比を現在の3.3%から約6.5%にほぼ倍増させることを提案している。これに掛かる費用は年間約16兆円。

問題はその金がどこにあるのかだ。単純に増税によって予算を増やすのであれば、国民は一段と苦しむことを強いられる。かといって歳出削減で約16兆円を補うのは、既にいっぱいいっぱいの日本にできるのだろうか。「膨大な金額だが、決して不可能ではないと私は考えている。」フェルドマンはそのように述べている。