──石油価格の大幅下落を目の当たりにしながら、減産を拒んだサウジアラビア。中東の大国が仕掛けた最新の「石油戦争」には標的が2つあるという。
ロイターより。
国際的に石油が安くなっている(しかし、日本は大幅な円安状態にあるので石油が安くなっていることを実感しずらいかもしれない)。なぜ石油が安くなっているかというと、サウジアラビアなどの原油国が安く売っているからだ。なぜ安く売るのか、その目的は2つある。
ひとつはアメリカのシェールオイルを市場から追い出すことだ。
シェールオイルは従来の技術では採掘が難しかったが、技術の進歩によって利益を出しながらの採掘が可能となった石油のことである。同じような存在にシェールガスがある。このシェールオイル・ガスが採掘可能となり、これを売ることでたくさんの利益がだせるようになるだろうと予測された。このような事情で安価なシェールオイル・シェールガスが世界中に出回り、世界のエネルギー事情に変革が起こると考えられた。これはシェール革命と呼ばれる。
アメリカには莫大な埋蔵量が見込まれることから、シェール革命によって、不調だったアメリカの経済は大復活を遂げるかに思われた。ところがそうならなかった。サウジアラビアなどの原油国が石油の大安売りを始めたからである。シェールオイル・シェールガスの利点は「安いこと」、さらに言えば「中東の石油よりずっと安いこと」なのに、その中東の石油が大幅に安くなってしまったのである。中東の石油がすごく安いんだったら、わざわざシェールオイルに乗り換える必要性はない。原油国としても、アメリカが石油を買ってくれなくなる、そのうえアメリカが安い代替品を世界に売り始めるという事態に危機感を覚えたのだろう。
こうやって石油の安売りをすることで、シェールオイルを市場から追い出そうと言うのが一つ目の狙いだ。
ニュース引用元のロイターの記事は、原油国の石油の安売りはふたつめの狙いがあると言う。それはロシアとイランへの制裁なのだという。ロシアとイランは、意外かもしれないが、普段は石油を売ってたくさん儲けている。しかし、イラン・ロシアと対立するサウジアラビアは、石油の安売りをすることで、イラン・ロシアの大切な収入源である石油の値段を下げ、経済的なダメージを与えようとしているらしい。